別納割引制度廃止に関するアンケート調査結果(概要版)

(社) 全日本トラック協会
日本貨物運送協同組合連合会

1 現状の高速道路の利用実態
・別納割引制度適用による現行の料金水準であっても、トラック事業者は高速道路を利用控えする傾向が強く出ている。利用控えの指導をしている事業者が全体の約86%、実際に利用控えしている事業者は約80%、過去5年間において利用が減少した事業者は約46%にのぼる。
・利用控えの原因として、高速道路利用料金を荷主に別途請求できない取引慣行があり、高速道路を利用控えすることによりコスト削減する経営行動をとる傾向にある。
・別納割引制度適用による割引料金水準を前提とした輸送原価の設計がなされているが、収入となる運賃水準は競争激化により徐々に切り下げられてきており、現行別納割引制度適用による高速道路利用料金でも、経営が圧迫されている状況にある。

2 別納割引制度廃止による影響
・トラック事業協同組合は、「事業展開上のネットワーク、情報交換、コスト削減サービス」などに寄与し、中小零細事業者にとって必須の存在になっている。また、別納割引制度についても「別納割引分を前提に運賃原価が設定されているため、別納割引制度がなくなることは経営に非常に大きなダメージがある」とする意見も目立った。
・競合の激しいトラック業界におけるトラック事業者の「ビジネス・モデル」には、長い年月をかけ事業協同組合と別納割引制度が根付いており、急激な制度変更(別納割引制度廃止等)はトラック事業者の経営に重大な影響を与える。また、割引率が縮小された場合には、トラック事業者は現行の運賃コストの範囲内で利用料金を削減する経営行動を選択する事業者が71%にのぼる。

3 本調査からの示唆
・トラック事業者の経営は全体的に非常に厳しい状況にある。別納割引制度廃止により、事業協同組合が対象とされず、現行の30%近い割引率も縮小の方向に向かえば、トラック事業者の経営に大きな影響を与え、高速道路の利用控えが一層加速することが予想される。
・利用料金の実績別に考察すると、利用料金が多い利用者層ほど、割引率縮減による利用控えを加速させる傾向が明確(6,7P)。新割引制度における割引率設定は特に慎重に対応することが必要である。
・事業協同組合が大口割引の対象とされない場合、トラック事業協同組合の事業構造の特性が起因し、廃業に追い込まれる。その結果、中小零細事業者に影響が波及し、一層厳しい収益構造となる。
・今後の新割引制度に係る制度設計においては、多頻度利用者であるトラック事業者のニーズを踏まえた制度設計が望まれる。特に、中小零細トラック事業者への配慮が特に必要である。
・新割引制度では、トラック事業者の利用控えを抑制し、利用増加に転じる新施策が不可欠であろう。

○ 調査の概要

(1) 調査の目的
 日本貨物協同組合連合会に加入するトラック事業協同組合の会員事業者を対象に、別納割引制度に関するニーズ及び事業者の高速道路の利用実態を把握し、新割引制度のあり方を検討する目的で本調査を実施した。
(2) 調査実施期間
 平成15年11月から12月
(3) 調査方法
 日本貨物協同組合連合会に加入する86のトラック事業協同組合が4,125の会員事業者に対し、調査用紙(記名式・
 各事業協同組合宛ファックス返信)を送付し、回収した。有効回答1,417社。
(4) 調査の対象
  一般貨物自動車運送事業者
(5) アンケート項目
 「I 会社概要」「II.現状の別納割引制度の評価」「III.新割引制度への要望」を中心に項目設定。


I.トラック事業者の現状

1.事業開始時期、組合への加入時期、別納割引制度利用開始時期

 中小トラック事業者の多くは、組合へ加入、別納制度を利用して長期間経過しており、トラック事業の経営において、事業協同組合を通じた別納割引制度は非常に重要な役割を果たしている。
 自由記述形式のコメントからは、「組合は、事業展開上のネットワーク、情報交換、コスト削減サービスなど、必須の存在である」とする意見が多い。また、別納割引制度についても「別納割引分を前提に、運賃原価が設定されてきているため、別納割引制度がなくなることは経営に非常に大きなダメージがある」とする意見も目立った。
 
競合の激しいトラック業界におけるトラック事業者の「ビジネス・モデル」には、長い年月をかけ事業協同組合を通した別納割引制度・事業協同組合そのものから受けるメリットが根付いており、急激な制度変更はトラック事業者の経営に甚大な影響を与えることが予想される。

2.別納割引制度利用による事業協同組合に対して支払い高速道路使用料

 アンケートに回答した事業者は保有車両100台未満の社が90%以上を占める。
 事業協同組合に払う高速道路使用料は、毎月10万円〜50万円未満が最も多く(24.3%)、次いで100万円〜200万円未満(17.9%)、200万円〜500万円未満(16.6%)となっており、1社当りの利用規模もかなり少ない。なお、今後高速道路使用料金ごとに比較検討する場合、群ごとの差異を明確にするために3群に分けて検討する。低群は使用料金が「50万円未満」、中群は「50万円〜200万円未満」、高群は「200万円以上」であり、それぞれ全体の37.5%、33.0%、29.5%である。

保有車両台数 月間の高速道路使用料

3.使用料金3群について

 事業協同組合に払う高速道路使用料の分析には、その群ごとの差異をより明確にするため3群(使用料金低群・中群・高群)に分類することとした。低群は使用料金が「50万円未満」、中群は「50万円〜200万円未満」、高群は「200万円以上」であり、それぞれ全体の37.5%、33.0%、29.5%となっている。
高速道路使用料別の群分け

4.利益確保に向けた高速道路の利用控えの傾向

 利用控えの指導をしているという回答(「一層強化している」と「指導をしている」の回答の合計)は86.0%であり、特に利用控えの指導を一層強化しているという回答は全体の約4分の1である。
 現在は,高速道路の利用を控えているという回答(「かなり控えている」と「ある程度控えている」の合計)は80.1%であり、全体として高速道路の利用は控える傾向にある。
 高速道路の利用を控えている理由の回答は、「運賃が下落し、荷主から料金をもらえない」(861)や「現在の運賃では利用しづらい(852)」が極めて多くなっている。
 なお、高速道路使用料金別に利用控えの実態を検討したところ、使用料金中群においては特に控える傾向がみられていた。

利用控えの指導実態 利用控えの実態
利用控えの理由(今回調査) 利用減少の理由(昨年度調査)
高速道路使用料金別の利用控えの実態(利用実績別の集計)


II.現状の別納割引制度について

1.現在の「別納割引制度」における満足度

 「協同組合を通じた割引制度の利用」、「利用料金の後払い(後納)」の項目において満足度が高く出ている。一方、「割引率」、「保証金の水準」に関しては、満足度水準は相対的に低い。

2.事業協同組合を通した別納割引制度利用のメリット

 別納割引制度のメリットには、「利用料金の後納(1,232)」が最も多く、次いで「高い割引率(879)」が挙げられていた。

3.割引率縮減による荷主への請求についての可否

 「別納割引制度が廃止されて、高速道路料金割引制度の割引率が現在よりも低くなり、高速道路利用料金負担が増加した場合、別途、荷主に請求できるか」という質問に対し、高速道路料金増加分を荷主へ別途請求できないと回答した比率は、80.6%と非常に高い。一方、「全額請求できる」と回答した比率は3.0%に過ぎない。
 高速道路使用料金別に検討すると、使用料金中群・高群において「全く請求できない」の比率が高くなる傾向がみられた。つまり、割引率が縮減した場合の増加コストは、荷主ではなくトラック事業者が負担する取引慣行になっていることが考察される。

高速道路使用料金別の荷主への請求の可否(利用実績別の集計)


III.新割引制度について

1.現在の別納割引率変化による利用行動の変化

<全体考察>
 別納割引率の縮減による高速道路の「利用距離」の減少比率については、利用減少傾向が顕著にでている。「全く割引がなくなった場合」は、高速道路の「利用距離」を50%減少させるという回答は24.4%になり、そのような状況では約4分の1が高速道路の「利用距離」を半減せざるを得ない状況にあることが示された。「割引率が一律13.8%の場合」は、高速道路の「利用距離」を50%減少させるという回答は1割強であるが、15%以上「利用距離」を減少させるという回答(-15%〜-50%の合計)は、過半数を占めていた。「上限割引率20%の場合」は、「利用距離」を減少させないという回答が若干増えたものの、「利用距離」を減少させるという回答(-5%〜-50%の合計)は、7割以上にものぼっていた。

<利用郡別考察>
 使用料金別の別納割引率の変化による高速道路の「利用距離」の減少比率については、群ごとに顕著な差異がみられている。まず、「全く割引がなくなった場合」は、使用料金が高くなるほど高速道路の「利用距離」を減少させるという回答比率が高くなり、利用料金高群ではほとんどの事業者が「利用距離」を減少させると回答している。「割引率が一律13.8%の場合」についても同様の傾向がみられている。「上限割引率20%の場合」は、30%以上利用減少するという回答率には群ごとの変化はあまりみられないものの、使用料金が増加するごとに5%〜20%利用を減少させるという回答は増加傾向にある。これらの結果から、高速道路の割引率が低下することによる高速道路の利用減少は、高速道路の使用料金の高い事業者に顕著に現れる傾向が示された。

全 体 集 計
高速道路使用料金別の利用行動の変化「全く割引がなくなった場合」(利用実績別の集計)
高速道路使用料金別の利用行動の変化「割引率が一律13.8%となった場合」(利用実績別の集計)
高速道路使用料金別の利用行動の変化「上限割引率20%の場合」(利用実績別の集計)

2.割引率が縮減した場合の対応(複数回答)

 現在の割引率が縮減した場合、「現在の運行コストの範囲内で利用料金を削減する(901)」と回答した比率が最も高い。さらに、「高速道路を使わないルート設定の検討(514)」など、割引率の縮減は、高速道路の利用離れに一層の拍車をかけるものとなる。

3.希望する割引率についての要望

 希望する割引率は、30%以上(52.9%)、20〜25%未満(21.5%)、25〜30%未満(17.0%)となっている。現在適用されている割引率と比較して、現状維持又は現状以上の割引率を希望する事業者が多い。高速道路使用料金別にみると、特に使用料金高群において希望する割引率が高くなっている。
高速道路使用料金別の希望する割引率(利用実績別の集計)

4.希望する契約形態と支払時期についての要望

 契約形態については、「事業協同組合と契約する新割引制度(1,183)」と最も多くの事業者が回答している。事業協同組合は、共同購入など様々なサービス提供しており、トラック事業者にとって非常に重要な存在であり、新割引制度にも関与させるメリットは大きい。
 一方で、「クレジット会社、金融会社と契約する新割引制度」、「トラック事業者と道路公団との直接契約」の希望者はかなり少なくなっている。
 支払時期については、「利用料金の後納(95.1%)」が最も多く、「利用料金の前納」は全体の0.3%とほとんどの事業者が希望していない。

希望する契約形態 希望する料金の支払時期

5.事業協同組合を通した割引制度のメリット(自由記述)

 「事務手続きの簡素化(203)」を最も多くの事業者が指摘している。次いで「安定的な高い割引率の確保(86)」、「安心感や信頼(78)」、「組合の存続(73)」や「共同参加のスケールメリット(60)」が挙げられ、事業協同組合を通したメリットの大きさを指摘する多くの事業者の声が寄せられた。
 トラック業界の中小零細事業者にとって、事業協同組合の存在意義は予想以上に大きいため、事業協同組合の存在は不可欠なものとなっている。

事業協同組合を通した割引制度のメリット(自由記述まとめ)
社数 項目 具体的な内容
203 事務手続きの簡素化 従来型であれば申請事務が発生しない。個々に手続きせずにすむ。円滑に進む。管理費用が少ない。問い合わせが簡単。事業に専念できる。
86 安定的な高い割引率の確保 共同参加によって、高い割引率が確保される。
78 安心感や信頼 営利目的ではない。これまでの利用実績。顔の見える運営が行われる。管理面において信頼できる。
73 事業協同組合の存続・事業の安定化・収益貢献 組合事業の存続のために必要。組合事業を安定させる。組合の収益に貢献できる。
60 共同参加のスケールメリット …法人と異なる交渉力。相互扶助やコラボレーション。平等の条件が守られる。
55 保証金の一括保証 保証金が少なくてよい、あるいは不要。手形・不動産・従来のものを利用できる。
47 支払い料金後納制度 支払いが後納できる。
27 支払等が便利 さまざまな融通が利く。きめ細かい対応をしてもらえる。
25 従来型で十分なメリット 現状に満足、慣れている。デメリットなし。不都合は感じていない。従来型のほうが資金面で有利。
23 利用に関する研修会・アドバイスや相談業務 研修会にての啓発活動や窓口で相談できる。
20 協同組合の一事業 別納割引制度は組合の存在に不可欠な要素であり、組合を通さない割引制度なら組合の存在価値は大きく下がる。
18 資金繰りの安定化 資金繰りが安定する。
18 情報の収集・交換・共有 同業者の情報や業界動向の情報が得られる。組合員との相巨交流ができる。
15 活用の際の整備 管理がうまく実行され無駄がない。窓口がよい。
14 請求書の利便性 カードごとの利用明細の発行。請求書が車両毎で管理しやすい。
13 協同組合には数々のメリット 従来通りのサービスが期待できる。
11 組合員の団結・連帯の強化 組合員の団結や連帯が強くなる。外圧に対して団結できる団体になってほしいため。
9 組合加入により利用実績に応じた割引 多量利用による割引率のアップ。利益分量配当での還付、割引返納金がある。
5 金融会社の判断によって契約を左右されない 金融会社の都合で契約内容が変更される心配がある。
3 情報の不正防止 クレジット会社、金融会社(ノンバンク)より情報が漏洩する頻度が高い。
3 窓口となる外郭団体が増設への懸念 道路公団との直接契約の場合、窓口となる外郭団体が増える可能性がある。
2 組合員の融和と連帯責任 組合員の融和と連帯責任において遂行すれば良いと思う。
2 大手トラック事業者優遇の不公平感 中小事業者の集合体で、組合員全員で行っているので一律の割引率を望む。
2 地域密着 地域と密着している。近くで便利。
1 組合員であるので協同組合と契約 新割引率が道路公団およびクレジット会社と同じであれば、組合員であるので協同組合と契約したい。
1 割引率アップにならどの形態でも 割引率アップにならどの形態でもよい。
1 安い経費 安い経費で運営できる。
1 回答しにくい 新割引制度の内容が定かでなく回答しにくい。基本利用料金の割引と、利用実績に応じた割引の合算で現行の割引以上のものを望む。
1 資金の効率化減少 資金の効率化が減少する。